データソリューション事業

大腸がん手術の動画解析に関する
国立がん研究センター東病院との共同研究

2018.09.14

MICINは国立がん研究センター東病院と共に、AIを用いた大腸がん手術の動画解析に取り組んでいます。熟練の医師はどうやって手術をするのか――。AIでその手法を明らかにすることで、離れた場所にいる医師にも、「上手な手術の仕方」を伝えることができるようになります。この研究はAMED(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)の事業に採択されています。

約1000例の手術、数十万枚の動画を解析

今回の研究では、日本中の病院で実施された約1000件の大腸がんの内視鏡手術が対象となります。
1つの手術の平均時間は約3時間。全部で数十万枚強の画像をAIで解析していきます。
研究ではまず、どの画像がどの場面のものかをタグ付けしていきます。
ひとことで「大腸がんの内視鏡手術」と言っても、手術を担当する医師や患者の状況によって手順は異なります。
そこで、この場面は「病変をつかんでいる」「病変を切除している」などと、画像を整理していきます。

こうしてタグ付けされた画像ができると、次に「上手な」手術とはどのような手順でどのように作業しているのかを解析していきます。同じ作業をなんども繰り返さない、手術時間が短いなどの基準をもとに、「上手な手術」を定義し、そうした手術の共通項をAIで明らかにしていきます。

日本は大腸がん手術の先進国

実は日本は大腸がん手術の先進国と言えます。経済産業省の資料によると、日本では大腸がんの5年後の生存率は77%。米国(65%)や英国(59%)と比べても高い水準となっています。高い生存率の背景には日本の医師のスキルの高さがあるでしょう。

世界的に評価が高い日本の大腸がん手術ですが、その中でもさらにトップクラスの医師が集まるのが、国立がん研究センターです。同センターはなぜ、今回MICINと共同研究に取り組むことになったのか。国立がん研究センター東病院の大腸外科長・伊藤雅昭先生に研究の狙いや今後の展望などについてお話を伺いました。

「AIで“うまい手術”を判定」

――AIで大腸がんの動画手術の工程を解析しようと考えたきっかけを教えてください。
 「大腸がんの手術評価のために、日本では学会主導のもとで技術認定試験を実施しています。現在は手術の動画を見てエキスパート医師が合否を判定していますが、この作業をAIでできないか、と考えたことがきっかけです」
「通常、大腸がんの内視鏡手術は術者と補助医師2人を含めた3人の医師が行います。数本の手術器具がどう連携してどう動けば“うまい”手術なのか。これまで、医師が動画を見て判断してきましたが、評価方法は必ずしも確立されていません。AIで“正解”を見つけよう、というのが今回の取り組みです」

――医師によってそれほど技術のスキルに違いがあるのでしょうか。
「認定試験に送られてくるのは実際に行われた手術の動画です。試験では70点以上が合格となり、60点〜75点が最も多いのですが、50点以下も2割くらいいます」
「手術の熟練度を大きく左右するのが経験です。一般に、30〜50回手術を経験すると一気にうまくなると言われています。国立がん研究センター東病院は年500件程度大腸がんの内視鏡手術が行われており、私も多い時は年200件くらい手術をしています。内視鏡手術の数は所属する病院によって大きく異なり、年間ゼロだったり、開腹手術しか行っていない病院もあります。医師は熟練の先輩医師の手術に立ち会い、経験を積むことで技を身につけると言われていますが、そういった病院では、技術の会得がなかなか難しいのではないでしょうか」

――AIによる動画解析に期待していることを教えてください。
「手術室という“密室”の中で起こっていることが客観的なデータになることで、遠く離れた場所の医師にも伝えることができるようになります。他の医局の医師からも、『食道がんや胃がんなど、他の手術でも同じようにデータ化できるのではないか』と聞かれることも増えてきました。」
「将来的には手術をデータベース化し、それを基に手術が上手か下手かを判定する評価ソフトを作れないか、と考えています。その先には手術の一部を自動化することも考えられるでしょう」
「日本の医師は技術の習得に対して貪欲で、手技が繊細だと言われています。データ化することで、将来的には日本の医師の技術を海外に輸出することも視野に入ってきます」