過敏性腸症候群患者の症状緩和に向けた
大学病院との共同研究
国立大学法人東京大学、国立大学法人東北大学と共同で取り組んでいるのが、過敏性腸症候群患者の症状緩和を目指し、認知行動療法の技法の一つである暴露療法*1を用いる治療用アプリ開発に向けた研究です。
日常生活の中でのきっかけを見るけることが大切
過敏性腸症候群は、腸に炎症や腫瘍などがないにも関わらず、腹痛や便秘・下痢などの便通異常が数ヵ月以上続く疾患です。日本での有病率は約14%であり、欧米でも10~20%と言われています*2。
腹痛や便通異常はストレスや不安などの心の状態によって引き起こされるため、症状緩和のためには日常生活の中でのきっかけを見つけ、そのきっかけに対してストレスや不安を感じにくくなるようにしていくことが必要となります。
認知行動療法を用いた治療用アプリ開発を目指す
本研究では、過敏性腸症候群で心療内科を受診する患者に、ストレスや不安への耐性をあげるために暴露療法*1に取り組んでもらいます。患者はアプリを通じて日常生活と症状を記録し、暴露療法に取り組んだ際の、感情や行動の様子もアプリに記録します。記録されたデータはサーバーに送られ、タイムリーに解析され、その解析結果に基づき、取り組んだ暴露療法に対するフィードバック等を患者は得ることができます。これにより、患者が自身の症状をより深く理解し、症状のセルフコントロールを促すことで、アプリによる症状緩和が可能かを検証します。
さらに、医師はアプリを通じて収集されたデータにより、患者の日常生活での状態や暴露療法の実施状況を把握しながら診察できるとともに、解析結果をもとに患者にあった治療法の提案も行えるようになります。
この研究を踏まえ、将来的には過敏性腸症候群患者向けの認知行動療法を用いた治療用アプリの開発を目指していきます。
*1:不安の原因になる刺激に段階的に触れることで、不安を消していく方法
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-006.html
*2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpdd/20/1/20_23/_pdf