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2021.3.18講演・出版
『行政、医療現場、企業から見た医療DXの本質』をテーマにウェビナーを開催しました
株式会社MICINは、「行政、医療現場、企業から見た医療DXの本質」と題し、製薬企業や医療機器メーカーの方々等を対象としたウェビナーを1月27日に開催いたしました。
本ウェビナーでは、行政、医療現場、企業の3つの異なる視点から、日本の医療が抱える課題とデジタル化を通じていかに解決を目指すのかについて議論を行いました。また後半には参加者からの質問を交え、活発なディスカッションが行われました。
<セミナーアジェンダ>
【行政、医療現場、企業から見た医療DXの本質】
主催:株式会社MICIN/協賛:株式会社デジタルガレージ
1. 行政が目指すデジタルシフトによる患者の価値を中心にした医療の姿
登壇者:経済産業省商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐 / 医師
藤原崇志氏
2.臨床現場におけるヘルスケア×デジタルへの期待
登壇者:慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 特任助教/HIKARI Lab / Doctor Mate/医師
鈴木航太氏
3.患者サポートプログラムの実現に向けた企業の取り組みから見える光明
登壇者:株式会社MICIN SVP 草間亮一
4.パネルディスカッション
モデレーター:株式会社デジタルガレージ/日本デジタルセラピューティクス推進研究会事務局 宇佐美克明氏
経済産業省商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室 室長補佐 藤原崇志 医師
慶應義塾大学医学部 精神・神経科学教室 特任助教/HIKARI Lab / Doctor Mate 鈴木航太 医師
株式会社MICIN SVP 草間亮一
<セミナーレポート>
1.行政が目指すデジタルシフトによる患者の価値を中心にした医療の姿 (藤原崇志医師)
医師であり、現在経済産業省に出向されている藤原先生より、行政の立場から現在取り組んでいることや課題についてお話をいただきました。
現在内閣府で示されている「Society 5.0」における医療介護分野では、様々な個人の生体情報を含むビッグデータを活用することが示されており、医療データの共有により場所を問わない最適な治療等が考えられています。経済産業省では、医療・ヘルスケア分野における機器・ソフトウェアの開発支援を様々な事業を通じて行っており、企業にはぜひ、当分野において事業創出に取り組んでもらいたい、と話されました。
2020年は、Appleの心電図アプリケーションや、「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」など、スマートフォン・スマートウォッチなどで動作するプログラムが医療機器となった大きな年となりました。経済産業省では、プログラムの医療機器の該当性について、解釈が困難で異業種からみて参入障壁となっていることから、スマホアプリなどを含むソフトウェア開発における基礎知識を示したガイドブック等の発行も今年度中に検討されています。さらに、遠隔診療を支える医療機器等の支援予算の検討や、PHR・医療データ利活用を含めた新規事業創出への仕組みづくりなどを考えている、といったご説明をいただきました。
2.臨床現場におけるヘルスケア×デジタルへの期待(鈴木航太医師)
医師であり、医療系スタートアップの経営にも携わられている鈴木先生より、臨床現場でのデジタルヘルスに寄せる期待についてお話をいただきました。
疾患治療においては薬物療法だけでは解決できない問題が多く、デジタルヘルスは予防的介入や患者の行動変容促進の観点、また診療補助の観点からも活用が期待されます。近年日本や海外で様々な医療シーンにおいてデジタルヘルスの研究開発が行われている一方で、臨床現場としてはまだあまり大きな変化を感じられていないという印象を受けている、と語られました。これは法規制や診療報酬などの影響が大きく、既存の医療以上のコストがかかる技術に対して病院が採用しづらいことや、技術に対する責任の所在が不明瞭、などによるものと想定される、と説明されました。
一方、現在内閣府が推し進める「Society5.0」の取り組み等、臨床現場の課題を解決する手段として、デジタルヘルスは期待が高まっており、今後徐々に浸透していくと考えられます。今後の開発においては、医療・患者の使いやすさをくみ取り、ストレスなく現場に溶け込むことのできる技術が必要であり求められている、と期待をお話いただきました。
3.患者サポートプログラムの実現に向けた取り組みから見える光明(草間亮一)
弊社の草間から、ヘルスケア業界のデジタルシフトの背景と患者サポートプログラム(PSP)の構築に向けた取組みについてご紹介いたしました。
ヘルスケア業界のデジタルシフトが加速する背景としては、COVID-19拡大を契機としたオンライン診療の需要の高まり、時限的緩和措置の恒久化議論、薬機法改正による薬局薬剤師の積極的な関与や医療連携、が挙げられます。また臨床現場においては、ペイシェントジャーニーにおける各ステップで患者の状態が適切に把握できていないという課題が明らかになってきています。このような中、世界で様々なデジタルツールが開発され、現場に浸透してきている中、日本ではアンメットニーズの大きな患者層に対して継続的なデジタルツール利用を促せていないことが普及の遅れと考えられ、今後個別化された治療介入が日本で広がってくると考えられます。
合わせて、弊社の患者サポートプログラム(PSP)についてご紹介をいたしました。疾患領域における患者のペインを深堀りしながら、具体的なソリューションを創出するのが弊社のアプローチです。理想的なペイシェントジャーニーを、患者や医師のインタビューを通じて定義し、その後疾患ごとにエビデンスを構築し、その上で普及を目指すという3段階で取り組んでいます。
患者の治療体験の場面ごとに、適切な深さの介入を実現できることがPSP構築に向けた競争優位性となると考えています。
4.パネルディスカッション
最期に、株式会社デジタルガレージの宇佐美克明氏にモデレーターを務めていただき、医療DXの未来について4名でディスカッションを行いました。
(ディスカッションの一部ご紹介)
●健康に無関心な層に健康管理や治療に取り組んでもらうためにアプリ等デジタルに必要な点に関して議論されました。行政としては未病者層に対してAI予測やPHR連携を通じて行動変容を促す仕組みづくりに向け、企業保険者等と協力しエビデンスを積み上げていく必要がある、臨床現場としてはゲーミフィケーション等を活用し、制度ではなく当たり前に日常生活で取り組めるような存在になることが一番の理想である、という意見が挙がりました。また、早期発見の技術は高まっている中で、個々人の特性に合わせたアプローチ方法が研究されることで行動変容が加速されることを期待しており、また医療機関負担の面も考慮する必要がある、といった議論がなされました。
●規制改革推進会議においてSaMDの推進が議論されている中、どのような制度改正を期待しているかについて議論されました。AIを搭載した医療機器の承認申請について工数が多くなってしまう中で、安全性・有効性を担保しつつ、各省庁が進める制度などを上手く活用しながらバランスの取れたシステムづくりがポイントとなってくるのではないか、という話がありました。また、現在は医療情報が一元化されている訳ではないため、AIの栄養ともいえる適切なビッグデータを収集できる仕組みができれば、ヘルスケアビジネスがより活性化されていくのではないかという意見がありました。
●ヘルスケア関連アプリについては、医療機器と非医療機器が存在するが、治療用アプリとして認可されているものはまだ少ないのが現状です。今後これらは連携していく方が良いのか、という点について議論されました。医療機器と非医療機器の線引きは明確なものではなくなってくる可能性があり、その中で非医療機器については患者の費用負担で選択し活用できるように、いわゆる“デジタル特保”のような一定の効果をうたえる仕組みがあると良いのではないか、という意見がありました。
●最後に製薬企業の未来のビジネスがどう変わるかについて意見を頂きました。従来は病気になった患者を医薬品により健康にするということがメインでしたが、今後未病へのアプローチや個人に即した健康をデザインする未来に代わっていくことが予想されます。その中で製薬企業には、外部のパートナーを上手く活用しながら、医療現場や行政と一緒になって、患者のアンメットニーズに即した治療や医療を提供する提案がなされることが期待されました。
MICINは今後も、様々な疾患領域の製薬企業や医療機器メーカーと協同で患者の治療継続を支援するサービス開発などを行って参ります。