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2024.5.8臨床開発デジタルソリューション事業
中外製薬、国立がん研究センター中央病院、大阪医科薬科大学病院、MICIN、4者連携での新しいDCT実施体制による、がんに対する第I相臨床試験を開始
【概要】
中外製薬株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 CEO:奥田 修)、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在:東京都中央区、病院長:瀬戸 泰之)、大阪医科薬科大学病院(所在:大阪府高槻市、病院長:勝間田 敬弘)、株式会社MICIN(本社:東京都千代田区、代表取締役:原 聖吾)は、患者さんの臨床試験へのアクセス向上を目指し、新しい分散化臨床試験(decentralized clinical trial:DCT)(※)実施体制を導入し、進行固形がん患者さんを対象とした中外製薬主導の第I相臨床試験においてDCTを開始したことをお知らせいたします。本試験は、治験実施施設の国立がん研究センター中央病院とサテライト医療機関(※※)として大阪医科薬科大学病院が連携し、従来は治験実施施設で行っていた検査や評価の一部を、オンライン診療を活用しサテライト医療機関で実施します。
がんに対する企業主導の第I相臨床試験でのサテライト医療機関の活用は本試験が国内で初めてであり、第I相段階では実施施設が非常に限られるため、治験実施施設から遠方にお住いの患者さんに対し、新薬候補の臨床試験へのアクセス向上が期待できます。本試験でDCTにおける新たな実施体制を評価し、居住地を問わず多くの患者さんが臨床試験にアクセスできる実施体制の構築を目指します。
【背景、および取り組み内容】
新薬候補の臨床試験は、限られた医療機関で行われるため、治験実施医療機関から遠方にお住いの患者さんにとって、臨床試験に参加したくても、通院に伴う時間的・経済的負担により断念するケースがあり、患者さんが臨床試験にアクセスしやすい環境整備は、製薬会社・アカデミアをはじめ、臨床開発における共通の課題です(1)。国立がん研究センター中央病院による研究でも、移動時間が片道120分を超えると、臨床試験への参加率が減少傾向にあることが明らかとなっています(2)。また、がん患者さんを対象とした第I相臨床試験は薬剤の安全性を評価する試験のため、患者さんの安全を確保しながら状態を注意深く観察する必要があり、実施できる医療機関が非常に限られています。
近年、新たな手法として、患者さんの来院に依存しないDCTが注目されています。国内ではガイドラインの整備がされ始め、徐々に導入する臨床試験が増えていますが、がん領域ではまだ限られます。
本試験は、中外製薬主導の進行固形がん患者さんを対象とした第I相臨床試験で、国立がん研究センター中央病院が治験実施医療機関として、DCTによる負担軽減効果が期待できる地域(国立がん研究センター中央病院への移動時間が片道120分を超える地域)にある大阪医科薬科大学病院がサテライト医療機関として参加しています。本試験の一部の来院では、患者さんは治験実施医療機関のかわりにサテライト医療機関に来院し、オンライン診療を活用して、臨床試験に関わる検査や評価を受けることができます。オンライン診療にはMICINが提供するDCTプラットフォーム「MiROHA(ミロハ)」を用いており、eConsentを活用した遠隔再同意も実施予定です。
(※)分散化臨床試験は、医療機関への来院に依存しない新しい臨床試験手法です。治験実施医療機関で行われていた臨床試験に関する検査や評価を、デジタル技術を活用して実施することで、患者さんが定期的に来院しなくても臨床試験に参加できるメリットがあります
(※※)サテライト医療機関は、臨床試験の実施医療機関以外で臨床試験に関する検査や評価の一部を行う場合に利用する医療機関です
【コメント】
中外製薬株式会社 代表取締役社長 CEO 奥田 修
「新薬の臨床試験は、一部の医療機関で実施するため、患者さんのアクセス改善が製薬業界共通の課題の一つです。サテライト医療機関の活用は、患者さんの負担を軽減し、臨床試験へのアクセス改善が期待されます。中外製薬が最も優先する価値観は患者中心です。患者さんをパートナーとして、患者さんとともに医薬品開発を進めることで、患者中心の高度で持続可能な医療の実現を目指していきます。」
国立がん研究センター中央病院 病院長 瀬戸 泰之
「現在、地方の患者さんは臨床試験への参加機会が圧倒的に少ないこと、特に希少がん・希少フラクションの臨床試験は都市部の病院に集中し、地方在住患者さんの臨床試験へのアクセス改善が重要な課題となっています。患者さんの来院に依存しない分散化臨床試験はこのような課題を解決する新たな臨床試験の手法です。このような手法によって、日本の創薬治験を活性化し、日本全国の患者さんが必要としている治療薬を迅速に届けることが当院の使命です。」
大阪医科薬科大学病院 病院長 勝間田 敬弘
「固形がん第Ⅰ相臨床試験において、当院はサテライト医療機関として、“誰一人取り残さないがん対策”実践の一翼を担わせて頂きます。地方において治験・臨床試験へのアクセス格差や、情報格差が問題となる中で、患者さんの負担を軽減すると同時にこれらの格差の解消を目指して、分散化臨床試験実施体制を当院は整えてまいりました。多くの新規抗がん剤の第Ⅰ相試験の経験を持つ当院ではありますが、このチャレンジングな試みが成功し、地方においても、がん患者さんの “Well Being”が実現出来るよう尽力いたします。」
株式会社MICIN 代表取締役 原 聖吾
「サテライト医療機関を活用した本試験の取り組みにより、患者さんの負担を軽減し、治験参加という選択肢が広がることが期待されます。DCTのリーディングカンパニーとして、本試験への取り組みを通じて、新しい治験の在り方に貢献できるよう尽力してまいります。」
【出典】
(1). 医療機関への来院に依存しない臨床試験手法の活用に向けた検討-日本での導入の手引き/日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会 タスクフォース3(2021年7月)
(2). Y Uehara, T Koyama, Y Katsuya, et al. Travel Time and Distance and Participation in Precision Oncology Trials at the National Cancer Center Hospital. JAMA Netw Open. 2023;6(9): e2333188
【各社・各施設について】
中外製薬:
中外製薬(本社:東京)は、抗体エンジニアリング技術をはじめとする独自の創薬技術基盤を強みとする、研究開発型の製薬企業です。ロシュ・グループの重要なメンバーであるとともに、東京証券取引所プライム市場の上場企業として、自主独立経営の下、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品の創製に取り組んでいます。中外製薬に関するさらに詳しい情報はhttps://www.chugai-pharm.co.jp/をご覧ください。
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院:
国立がん研究センター中央病院は、“社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療を提供する”という理念のもと、がん診療・研究・教育のリーディング・ホスピタルとしての役割を果たしています。がん研究において日本一の企業治験数・医師主導治験数を誇り、国内外のがん研究を牽引しています。国立がん研究センター中央病院に関する詳しい情報はhttps://www.ncc.go.jp/jp/ncch/index.htmlをご覧ください。
大阪医科薬科大学病院:
大阪医科薬科大学病院は高度な先端医療を行う特定機能病院であると同時に、北摂地域における地域医療の最後の砦でもあります。2022年7月に最新設備を導入したがん医療総合センターを擁する病院本館A 棟が完成し、2025年9月開院に向けて本館B 棟を建設中です。充実した設備と機能を活かしてここでしか受けられない医療と安らぎを患者さんとそのご家族に提供する病院を目指します。大阪医科薬科大学病院に関する情報はhttps://hospital.ompu.ac.jp/index.htmlをご覧ください。
株式会社MICIN:
MICINは「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を」をビジョンに掲げ、医療機関や薬局向けにオンライン診療やオンライン服薬指導サービスなどを提供するオンライン医療事業、医薬品の臨床開発向けのデジタルソリューション事業、デジタルセラピューティクス事業、保険事業等を展開しています。
コーポレートサイト:https://micin.jp
DCTプラットフォーム「MiROHA(ミロハ)」について
MICINが提供するDCTプラットフォームであるMiROHAは、オンライン診療機能、eConsent機能、およびeSource(Electronic Source Data:臨床試験の原資料となり得る電子原データ)機能を搭載したDCTプラットフォームとして2020年4月より提供を開始しています。現在、既に国内180以上の医療機関で2,000症例を越える患者様に利用されています。
これまで、多くの製薬企業様に採用された実績とノウハウをもとに、DCT領域のリーディングカンパニーとして、DCTソリューションの提供だけでなく、新しくDCTに取り組まれる企業への導入支援やコンサルテーションも積極的に行っています。
MiROHAホームページ:https://www.miroha.co/